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映画『21ブリッジ』

2019年公開(日本公開2021年)のサスペンス・アクション映画。 主演は、2020年に他界したチャドウィック・ボーズマン(『ブラックパンサー』)。劇場公開作品としては、ボーズマンの遺作となる。

公式サイト
http://www.21bridges.jp/

あらすじ

ニューヨーク市警のアンドレ・デイビス刑事は警察官を殺害した犯人を射殺した男として監査を受ける身、また自宅へ帰れば認知症の母親を介護をしていた。

真夜中、マンハッタン島でコカインの強奪事件が発生する。強盗犯のレイとマイケルは依頼人から強奪するのは数kgと聞かされ、隠し場所のワイナリーに侵入するが、実際には300kgもあり、全てを運び出すのは不可能だった。更に運の悪いことに引き上げようとしたところで店に数人の警官がやって来る。激しい銃撃戦の末警官数人を射殺したレイたちだったが、マイケルは何かがおかしいと感じ始めていた。

事件発生を受けてアンドレが捜査の指揮を執ることになり、仲間を殺害され怒りに燃える85分署の警官や、市長の意を受けたFBI捜査官の横やりを牽制しつつ、犯人を封じ込めるためマンハッタン島にかかる21の橋すべてを封鎖することを決定、FBIも午前5時までの期限で承諾する。

警察の包囲網を逃れつつ依頼人のもとへコカインを届けたレイ達は、腕利きの資金洗浄屋アディを紹介され、彼のもとへ向かうが、そこへ武装した警官が多数現れ銃撃戦になる。

アンドレは麻薬捜査担当のフランキー・バーンズ刑事と組んで監視カメラの映像から犯人たちの足取りを追っていたが、資金洗浄屋のアジトでの銃撃戦を知り、警官の早すぎる対応に疑問を持ち始める。

感想

ボーズマンの遺作ということで期待して観に行ったが、はっきり言ってまあ普通。

近年アメリカで問題になっている警察官による容疑者の殺害、警察内部の汚職、認知症になった母親の介護、お決まりのFBIと警察の縄張り争い、そして真夜中のマンハッタンを封鎖するというクローズドサークル的(というには少々広いが)展開等、魅力的なテーマが多数盛り込まれているにも関わらず、どれも深く掘り下げられておらず、「ただ並べているだけ」といった域を出ていない。

そもそもの発端となったコカインの量が事前情報と異なっていたのは「単なる情報不足」、資金洗浄屋を知っていたのも「偶然」(これについては一流の腕前ということで、必然的にここに頼むしかないということで一応納得できなくもないが)、レイのアルコール中毒もなにかの伏線かと思いきや、それ以降特に回収されることもない。

事件の核心に至っては物語序盤から予想できた通りの内容でしかなく、犯人に気付くスマホのシーンも、もう少し見せ方を工夫すればまだ良かったが、そのままズバリといった何のひねりもない演出なため、最後に犯人の一人が現れる時も意外性がまったくない。黒幕が犯行動機を白状するシーンも、同情の余地が微かにあるとはいえ、言い訳の範疇でしかなく、一番惜しかったのは、警官だった父親が犯罪者に殺害されたという過去を背負ってきた主人公が持つ警察官としての矜持との対比ができておらず、本作品の最大のテーマである「警察官が職権で復讐をすることは正しいのか?警察官が犯罪者を裁いていいのか?」という問題に対する、作品としての主張が伝わってこない。

結局最後はドンパチで解決という結末も、なんだかまとめ方に困って無理やり終わらせた感が否めなかった。チャドウィック・ボーズマンはもちろん、特に犯人2人組の演技がとても良かったが、それだけに脚本がもう少し練られていたらと惜しまれる。レイを演じたテイラー・キッチュは『ジョン・カーター』がコケて以来パッとしなかったが、今作での衝動的で情緒不安定な演技は良かった。

最大の見所は序盤のワイナリーでの銃撃戦。特に強盗2人組が使用するマシンピストルの音は圧巻で、とにかく「当たったら痛そう」感がビシビシと伝わってくる。想定外の事態に「何かおかしい」と感じているマイケルの感情が相まって、観ている側も何とも言えない不安感を掻き立てられる。この「音」は劇場ならではのものと言えるだろう。

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