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映画『透明人間』(2020年)

SFホラーの古典、1933年公開『透明人間』のリメイク作。嫉妬に狂った男が逆恨みし、自身の死を偽装して透明人間となり、妻(主人公)をストーキングしまくった挙げ句周りの人間を次々と殺害するというストーリー。

あらすじ

夫のエイドリアンから半ば軟禁状態で自宅に閉じ込められていたセシリアは、自宅のセキュリティシステムをかいくぐり、妹エミリーの協力でなんとか脱出に成功する。
その後エイドリアンが自殺し、セシリアに遺産を残していると、彼の兄で弁護士のトムから連絡が入る。しかしエイドリアンの病的なまでの偏執さと彼の高いスキルを知っていたセシリアは、自殺を偽装して自分に復讐しようとしていると考えていた。
やがてセシリアの周囲で奇妙な出来事が起きるようになる・・・。

ホラー映画における主人公の”孤立”

「恐怖」をいかにして演出するかがホラー映画のキモだが、その1つとして主人公の「孤立」が鍵となる。
これは閉鎖された空間に1人だけ閉じ込められるといった「地理的・物理的な孤立」と、自分を殺そうとしている敵の存在を周囲の人間が信じてくれない「精神的孤立」の2パターンに大きく分けられるが、本作は後者に分類される。
序盤から主人公セシリアは夫の死を疑っているが、周囲の人間は情緒不安定なセシリアの妄想と取り合わず、ついには妹を殺害した容疑で精神病院に入れられてしまう。ここからの逆襲が見どころの1つである。

透明人間の演出

透明人間の仕業を初めて観客にわかりやすく説明する、”ガスコンロの火が勝手に強くなる”シーンにおいて、シドニーの「水ではダメ」と言って消火器を使うシーンが、きちんと終盤への伏線になっている。
セシリアが精神病院でトムと面会するシーンでは天気予報の大雨予想がこれでもかと強調され、大雨の中で透明人間に雨粒があたってどこにいるか場所がわかるという、いわゆる”姿が見えない敵”を見つける定番的展開への伏線を思わせるが、結局そのような描写はなくむしろ雨の中で透明人間の姿を見失ってしまう。
これを前述の「水ではダメ」で消火器を使うというシーンと重ねて考えると、中盤のミスリードと終盤の対決シーンの2つの伏線を兼ねている事になり、なかなか凝った演出と言えよう。

一方で姿を隠しても犬にはバレてしまったり、ホラー映画の定番中の定番と言える、主人公が最後の最後で相手の技なり特長を意趣返し的に利用して悪党を倒すといった、お約束もそつなく押さえている。
ラスト自体はある種ありふれているとも言えるネタだが、そこに行き着くまでに二転三転のどんでん返しが用意されており、平凡なようでいて実際に映像で見るとそう思わせない見事な展開となっている。
監督のリー・ワネルは「SAW」シリーズの脚本や製作総指揮を担当してきたホラー畑の製作者だけに、彼の経歴に裏打ちされた手堅い演出を楽しむことができる作品である。

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